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第29回オリンピック競技大会マウンテンバイク日本代表派遣選手選考会

2008年06月07日 15:01 written by Teisuke Morimoto

5月24日、レース前日の八幡浜は豪雨に見舞われ、エキスパートクラスが開催されたコースは昨年のような泥海になっていた。


土曜日のレースが全て終わり、6時からスタートしたメディア向けの記者会見には男女10人の選手がピックアップされ、質疑応答がスタートしたが、印象的だったのは片山梨絵の表情の硬さだった。


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表情がほとんど無く、質問に答える時も頭の中で整理しきれない、そんな印象を受けた。片山の受けるプレッシャーの大きさは相当なものだっただろう。長年在籍し、飛躍的な成長遂げたチームからの突然の離脱。移籍がリークし、慌ただしく発表されたプレスリリース。移籍先は昨年まで在籍したチームが最もライバル視し、ビジネス的にも最大のライバルと言える会社。片山を獲得した最大の理由は北京行きが確実視されること、これに尽きると言ってもいいだろう。


五輪というイベントはモンスターだ。カーリング、ハンドボールでさえ五輪が絡むと日々のニュースにまで取り上げられるのだ。五輪への切符を手にしたなら、片山の契約金を軽く上回るPR効果が派生するだろう。実際に、スペシャライドは新聞広告を出稿するなど、マスに訴えかける戦略を取っている。五輪以上にマスに訴えかけるイベントがあるだろうか?もちろん無い。


4年前のこの大会では最終周で中込由香里に抜かれてしまい、目前で失うという苦い場所でもある。しかし、準備は完璧だった。箱館山での開幕戦の後など、数回に渡る極秘の八幡浜合宿を決行し、あらゆるコンディションでコースを研究、熟知した。片山は、翌日のレースに必ず勝たなければならなかったのだ。勝つことにより雑音を封じ込め、そして五輪を走らなければならない。この勝利は全てを解決する。


片山と対照的なのは矢沢みつみだった。終始リラックスした表情を見せていた。矢沢は開幕戦でパンクを喫しながらも片山から1分40秒差でゴールしており、存在感を増していた。誰もが片山 vs 矢沢の構図を想像していたのだ。



女子エリートのスタート。


日曜当日は朝から快晴となった。コースはみるみるうちに乾き、シングルトラックなど森の中以外はどんどんとドライコンディションへと変貌していく。女子リートは10時30分、快晴の中スタートした。


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ホールショットを得たのは真下正美。


真下正美がホールショットを得るものの、早々に転倒して負傷してしまい、レースから離れてDNFとなる。矢沢も最初のシングルトラックで転倒を喫し、片山のとのリードは徐徐に拡がって行く。片山と矢沢のデッドヒートでは??という大方の予想とは反対の、強さを見せつける片山の描いた通りの一方的なレース展開となった。


「ゴジラの背中」と呼ばれる木の根が複雑に路面に姿を見せるシングルトラックでも、落ち着いた呼吸ながらも安定した速さを見せつけ、他の選手が大量の汗と上がった呼吸でこのエリアに入り、ミスを誘発するのとは対象的だった。


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桜坂の名物コナーを立ち上がり、シングルを飛ぶ片山。


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ゴジラの背をスムーズにゆく片山。


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片山とは対照的に前輪を根に取られて苦戦する矢沢。


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レースは周を重ねるにつれ、片山が2位の矢沢との差を広げて行き、逆に中込が矢沢との差を詰めて行くことになる。最終的に片山がゴールラインを通過した時、矢沢との3分43秒まで拡がっていた。普段のMTBでは絶対にあり得ない数のTV、カメラがゴールした片山に殺到し、インタビューが始まる。別会場で設定された記者会見では、


「人の走りは変えれないので、自分がベストを出せたら勝てると思っていました。惑わされずに自分の走りをしようと。思ったより早く一人になれたので、この差を大切にして行こうと思って」


と語ったように、完全勝利と言えるだろう。とうとう五輪への切符を手にしたが、同じアジアにはWCで優勝を果たし、強国の仲間入りを果たした中国という強敵がいる。是非、今度は北京、そしてWCでの活躍も期待したい。


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女子の余韻がまだ残る14時、男子エリートがスタートした。山本和弘がホールショットを得て、山本幸平、小野寺健の順でアスファルトの登りに入る。この1周目に違和感を感じたという開幕戦の勝者、辻浦圭一はズルズルと順位を下げてしまい、後の診断では足の肉離れが判明する。


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またもやトラブルに苦しめられることになった竹谷賢二。


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強かった小野寺健。しかし山本はそれ以上に強かった。


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竹林を行く山本幸平。


男子の展開は先ほど終わった女子の様に、山本幸平による一方的な展開でレースは進む。4年前にここで八幡浜でアテネ行きの切符を掴んだ竹谷には試練が襲いかかる。前輪をヒットさせてしまい、エアを失ってしまったのだ。また、リアのインデックスにも変調を来していたためにフィードで前後輪とも交換するが、後輪には予定されたものよりも細いタイヤが装着されており、再び後輪を交換する事態となったのだ。「それでちゃんと走れるようになったから・・・」とレース後に語った様に、ここからは凄まじい追い上げを見せる。しかし、時既に遅く、山本幸平は遙か前方を行き、次に小野寺健、3位でゴールするのが一杯だったのだ。


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山本はゴールラインを通過する時、号泣しながら、顔を歪ませながらゴールした。そして、その直後には笑顔を見せながら喜びを爆発させた。10日間の合宿を行い、「雨が降ったらトレーニングする」という位に徹底的にウェットコンディションを攻略したという。そして、「早く早く一人の展開になりたかった」いう通り集団での勝負になっても、常にその集団を引いて、誰のアタックにも付いて行くつもりだった。


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「北京五輪は行けるかどうか判りませんが、明日から行けるものと思って精進します」と語った山本は29日から再び渡仏して合宿を行っている。日本男子に五輪枠が回ってくるのかどうかは7月上旬には判明するという。是非期待したいものだ。


フォトギャラリーはこちら。
http://www.flickr.com/photos/bikedaily/sets/72157605254738330/show/


Elite Women Cross-Country
1 片山 梨絵神奈川県JPN SPECIALIZED 1:52:11.72 15.17
2 矢沢 みつみ山梨県 JPN team SY-Nak SPECIALIZED1:55:54.89 +3:43.17 14.68
3 中込 由香里長野県 JPN SY-Nak SPECIALIZED 1:56:00.77 +3:49.05 14.67
4 深井 薫大阪府 JPN チーム コラテック 2:08:00.72 +15:49.00 13.29
5 田近 郁美岐阜県 JPN GOD HILL 2:13:34.36 +21:22.64 12.74


Elite Men Cross-Country
1 山本 幸平長野県 JPN チームブリヂストン・アンカー 1:48:13.63 18.87
2 小野寺 健京都府 JPN SUBARU GARY FISH 1:49:41.54 +1:27.91 18.61
3 竹谷 賢二千葉県 JPN SPECIALIZED 1:52:23.32 +4:09.69 18.17
4 山本 和弘東京都 JPN キャノンデールYOUKAN 1:53:08.16 +4:54.53 18.05
5 門田 基志愛媛県 JPN TEAM GIANT 1:55:47.28 +7:33.65 17.63
6 千田 尚孝愛知県 JPN 1:57:02.20 +8:48.57 17.45
7 竹之内 悠京都府 JPN TREK 1:57:43.29 +9:29.66 17.34
8 辻浦 圭一長野県 JPN チームブリヂストン・アンカー 1:58:18.14 +10:04.51 17.26
9 江下 健太郎長野県 JPN Team MX/Salsa 1:58:18.91 +10:05.28 17.26
10 日野林 昴志郎愛媛県 JPN BSC/UCY/ナカジマ 1:59:46.93 +11:33.30 17.05


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