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Jシリーズ DH#5 瀬女大会レポート

2007年10月15日 21:50 written by Teisuke Morimoto

10月13-14日、JシリーズのXCO/DHIの最終戦が石川県白山瀬女高原で開催された。


土曜日に決勝が行われたDHは会場に不思議な空気が流れていた。ホンダは今季で撤退する。これはかなり前に明かになっていることではあるが、ホンダが公式に発表したことは無い。しかし、その事実は会場にいる全ての参加者の周知であり、ホンダのロゴを目にするのはこれが最後である、と考えると郷愁に駆られずにはいられない参加者も多かっただろう。


今回のコースはスタート直後と、フィニッシュ直前に若干に変更が加えられたのみで、基本的にはJシリーズの中でも高速コースに分類されている。しかし、コース中盤には通称ブナと呼ばれる斜度のあるスリッピーなセクションあり、ここはうっそうとした森に覆われているために少しの雨でも乾かず、選手を苦しめる難所となっている。ブナで失敗をすることは即座に敗北に繋がり、ブナを攻略した選手にのみ勝利の女神は微笑む。しかし今回は毎年雨に祟られる例年とは違い、レースウィークは好天に恵まれたため、比較的ブナの難易度は低くなった。


そのブナを今年最も攻略しきったのは永田隼也だった。金曜日のタイムセッションでは3位、予選は5位と振るわなかったが、転倒してクリーンなランを残せなかったためだ。しかし、ホンダが計測したブナの区間タイムは他の選手よりも4秒ほど速く、あの短いセクションでこれだけのタイム差を付けるのは驚異的だといえる。


好天の中12時10分にスタートした予選は安達靖が4:55.697でトップ、2位に3.3秒遅れで向原健司、3位に3.5秒遅れで柴田幸治という結果となった。さらに内嶋亮、永田隼也と続き、井手川直樹はブナ出口で転倒、その際に指を深く切ってしまい、6位となる。


秋の日差しが強く路面を照りつてコースを乾かし、ますます高速化させる。そして午後2時10分に女子決勝がスタートする。富田敬子、飯塚朋子、末政実緒と予選のリバース順でレースは進行し、富田敬子がゴールして飯塚がフィニッシュエリアに姿を見せるが、驚くべきことに末政はそのすぐ後ろを走行していた。決勝は1分のインターバルでスタートするが、そのインターバルを埋めてしまったのだ。末政のタイムは5:26.139で2位の飯塚に59秒の驚異的なタイム差を付けての完全勝利だった。トレック・フォルクスワーゲンチームを離れて以降は良いチーム体勢を実現できず、成績も低迷しがちだったが、インテンスへと移籍した今季はバイクやチームとの相性も良く、WCでも安定した成績を残してきており、来期への期待も膨らむ所だ。


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男子エリートでも余裕に決勝で進めるタイムを叩き出した末政美緒。


2時10分、男子決勝がスタートする。予選6位の井手川は大きく予選タイムを縮める4:59.734でフィニッシュ、算定1位となるが、予選で負傷した指の影響は否めない。そして次にフィニッシュラインを通過したのは永田。電光掲示板に表示されたタイムは4:47.821でいきなり40秒台に突入。フィニッシュエリアは観客のどよめきに包まれる。次にゴールした内嶋は4:50.269で及ばず、柴田幸治は逆に予選からタイムを落とす4:59.734に終わる。予選2位だった向原も55秒台で永田に及ばず、最終走者の安達に注目が集まる。しかし、コース序盤の短いシングルトラックでミスして失速、ここから高速セクションとなるがスピードの乗りが悪くなってしまいリズムを狂わせる。また、ブナの出口でも失敗、この小さな2つのミスが命取りとなり、内嶋にも届かない4:50.751でゴール。永田の初めての、そしてホンダにとって最後の勝利が決まった。


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予選での安達とのタイム差を見て井手川のスキンスーツを着用した永田。最後の激坂を勝利に向けて下る。


永田隼也のコメント
スタート前に今までやって来たことを振り返ったら、不安なことはもうなんにも無いかな、と思えて。井手川君が最終戦なんだし、コケてもいいからとにかく行けよ!って。コケないである程度の順位よりも、コケるか勝つかどっちかの方がいいって言われて。それで一気に楽になって吹っ切れて。ブナは特に全然速く走っているつもりは無かった。ただ、斜度がある所が好きだから、入り口からヤバイなってワクワクする感じがあったから、それが良かったのかな。


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そして、10月15日、ホンダからは初めて以下のような公式な発表があった。また、23 Degreeからもワールド版G-Cross Hondaの解散が発表されている


市川哲也
(株)ホンダ・レーシング マウンテンバイク・ダウンヒルレース統括担当
「2003年シーズンから、(株)ホンダ・レーシング(以下HRC)は、マウンテンバイク・ダウンヒルレースという未知のフィールドで、新しい技術へのチャレンジを行って参りました。当然ながら、初期はわからないことも多く、皆さまのお世話になりながら、試行錯誤を繰り返して参りました。これまでの5年間のダウンヒルレース参戦において、新技術の開発と熟成はもちろんのこと、技術者やスタッフ、ライダーの育成などさまざまなことを学ぶことができました。おかげさまで、期待を上回る成果を得ることができました。また、所期の目的を達成することができたと考え、今シーズンのレースをもって、HRC、そしてRN01のレース参戦を終了することといたしました。長年にわたり多くのことを学ばせていただいたダウンヒルレース業界、そして自転車業界の皆さまの温かいご指導とご協力、並びにファンの皆さまの『G Cross Honda』チームへの温かいご声援に感謝いたしますとともに、心より御礼申し上げます」


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もちろん、MTBレースからの撤退を発表したのみで、発売中止の発表は無い。なぜなら公式に販売を発表していないためだ。RN01が販売されなかったのは本当に悔やまれる。G-Cross HONDAの契約選手以外でRN01にDHコースで乗ったことがあるライダーはごく少数存在する。その乗り味は、「勝てない方がおかしい」と言わせるほど素晴らしいものだという。チームの解散後、資料用として保管される個体を除き、全てのRN01はプレス機に掛けられてアルミの産業廃棄物として処分されるという。昨年にWCでギアボックスレスのフレームが盗難されており、ヨーロッパでも1台が盗難により世に出ている模様だが、今後は我々がRN01を目にできる機会は無く、この最終戦が最後のチャンスとなった。市販中止となった理由として、品質が維持できないことが挙げられていたが、本当の理由は別の所にある模様だ。なんとも複雑な気分にさせられるが、大企業ならではのパワーと、大企業ならでは限界、その両方を感じさせる。


未完の大器だった永田が最大の弱点であったメンタル面を克服し、大きく飛躍しようとしている。残念ながらホンダは今季限りで撤退し、永田の所属するG-Cross HONDA IDEGAWAのオーナーである井手川によると、「現在就職活動中」という状態だ。ホンダにとって最後のレースでチームのホープが優勝するというのはあまりにも皮肉な事実だが、ホンダがダウンヒルレース界に残してくれた最後の贈り物かもしれない。ホンダが残してくれた遺産は大きい。その遺産を内嶋、井手川、永田が継承し、次世代に伝えて行くのを望むのと同時に、規模は違えどF1につぎ込むのと同じホンダスピリットをダウンヒル界で感じることができたこの5年間に対し、感謝を述べたい。


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忘れてはいけないのが三強の一角、安達靖だ。3位に終わったものの、Jシリーズ王者に2年連続で輝き、ナショナルランキングも1位とし、2冠となった。


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来年は未だに達成者のいない3冠を目指すという安達靖。


安達靖のコメント
ここはそんな得意なコースじゃなかったからね。まぁ、来年の課題も見えて来たしね。バイクの面でもね。新しいこともやりたいと思っているし、本当にハイスピードで斜度があるコースってここ位だし、それに合わせたセッティングも見えてきた。とりあえず2冠取れたことは良かったけど。今年、ホンダがいる中でチャンピオンが取れたから。来年とってもスッキリしないかも知れないしね。


これによりDHIの今シーズンの公式戦はすべて終了しオフシーズンとなる。G-Cross Hondaの3人にとってはハードなオフシーズンとなるだろう。


フォトギャラリーはこちら
http://www.flickr.com/photos/bikedaily/sets/72157602398968845/show/


エリート女子決勝リザルト

1位 末政 実緒 FUNFANCY/INTENSE 5:26.139
2位 飯塚 朋子 ATOMIC RACING 6:25.834 59.695
3位 富田 敬子 ZONE/Red Cone 6:30.641
4位 佐藤 百江 WORKS-1 6:53.494
5位 渡辺 キャリー キャノンデール 6:54.928
6位 中川 ヒロカ TeamCommencal JP 7:01.581
7位 服部 良子 服部良子 7:17.523
8位 池田 恭子 Team Cannondale 7:39.308
9位 菅原 亮香 アキファクトリーチーム 8:28.331
10位 楮本 百合子 KOUTA Superbikes 11:19.841


エリート男子決勝リザルト
1位 永田 隼也 G-CROSS HONDA IDEGAWA 4:47.821
2位 内嶋 亮 G-cross HONDA UCHIJIMA 4:50.269
3位 安達 靖 JPN Team Ikuzawa 4:50.751
4位 井手川 直樹 JPN G-CROSS HONDA IDEGAWA 4:53.531
5位 向原 健司 KHS/重力技研 4:55.567
6位 柴田 幸治 A&F SANTACRUZ 4:59.734
7位 和田 良平 RINGOROAD/Jykk 5:04.639
8位 青柳 修一郎 TEAM UNIVEGA 5:08.487
9位 門脇 祥 SeoCycle ARIGER 5:08.675
10位 丸山 弘起 teamTECHIN/参組 5:10.075


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