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Team G Cross Hondaは今季で終焉か?

2007年09月07日 13:00 written by Teisuke Morimoto

昨日、Hondaが長い間実戦テストを続けて来たRN01の市販モデル、RN01Gの販売を中止したとお伝えしたが、同時に今シーズン限りでJシリーズ、ワールドカップからも撤退する模様だ。


振り返ると2002年、伊田井佐夫選手がJシリーズに持ち込んだ最初のモデル、RNFからこのプロジェクトはスタートした。このRNFにはホンダのロゴが一切無く、伊田選手とホンダの関係の深さから、このバイクがホンダ製であることは誰の目にも明かだったが、専門誌は歯切れ悪く、「某バイクメーカー」製という程度に伝えるだけだった。


しかし、2003年、グローバルレーシングから呼び戻された井手川直樹、そして若手のホープと目されていた高橋唯之が加入し、Team G Cross Hondaが正式にスタート、翌2004年にはHRC体制という完全ワークス体制となって国内のホンダ時代がスタートする。また、この年には新井リゾート(盛田グループ)マネーに見切りを付けたマーティン・ホワイトリーが崇高な理想とは裏腹に、後味悪くグローバルレーシングを解散させ、グレッグ・ミナー、シリル・クルツを加入させたワールド版のTeam G Cross Hondaを立ち上げたのだ。


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最初にJシリーズにRNFを持ち込んだ伊田井佐夫。RN01によりマスターズ世界選手権を制覇。


Team G Cross Hondaは経験と勘、その程度の戦略しか行われていなかったJシリーズの全てを変えてしまった。2004〜2006年のHRC体制時代には驚くべき人員、機材を導入し、「勝つため」にやれるべきことは全てやる、そのチーム運営は、既存のチームが「レースごっこ」にしか見えなほどのインパクトがあった。実際に、このチームに加入した井手川は飛躍的に成長した。グローバルレーシングに加入する以前である、FFC/Foes時代には一発の速さがあり、それが良い方向に転がれば結果が出るものの、悪い方向に行けば予選落ち、という未完の大器とも言うべき状態だったのだ。グローバルレーシングでWCを転戦して2003年に帰国した井手川は大きな成長を見せ、さらにHRCのレーシングプログラムによりさらなる成長を遂げ、昨年は全日本選手権を10年振りに制覇、井手川時代の到来を予感させた。


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Team Ikuzawaのホンダ・サテライト時代にはホンダワークスを脅かす存在だった内嶋亮。2005年から高橋唯之と入れ替わるように加入。


Team G Cross Hondaはレースの戦略、選手の育成面では圧倒的な足跡をJシリーズの歴史に残した訳だが、バイクに関しては画期的だった当初の無段階変速(CVT)方式を捨て、ギアボックス方式を選択している。ホンダは昨年にこのギアボックスの内側を公開したが、その結果はガッカリ、というものだった。簡単に言うと、リアメカとカセットコグが収められていたのだ。これがホンダならでは技術だったのか?


ここでMTB magazine Vol.036の「HONDAの2輪開発を行う二輪開発センターのスタッフに聞くRN01開発秘話」から引用してみよう。


最大の課題は重量を減らすこと。そのために、既存の自転車特有のメカニズムを改めて研究し尽くした。ところが、研究すればするほど、100年の歳月をかけて培われてきた自転車のメカニズムはコンピューターではよくわからないほど理に叶っていて、短期間のうちにまったく新しいシステムによって重量を含めてこれを超えるのは難しいと判断。既存のシステムを上手く活用することで違ったものを作り上げた。


つまり、ホンダでさえ、100年の歴史の中で洗練されてきた自転車特有の技術を超えるブレイクスルーを見つけ出すことができず、ギアボックスにリアメカとカセットコグを収めるという方法を選択したのだ。しかし、この方法のメリットは計り知れない。BBと地面とのクリアランス確保、リアディレーラーが破損しない、ペダリングせずに変速が可能、泥や埃からの影響を受けないことなど、既存の変速システムを大きく上回る魔法のシステムに見えた。


しかし、このギアボックスによってレースが連戦連勝だったかというと、そうでは無い。確かに国内ではその通りだが、ワールド版のTeam G Cross Hondaでは世界選手権を制覇できていないし、昨年はグレッグ・ミナーは0勝、今季も目立った成績を残せていない。つまり、従来の変速方式が劣っている訳では無い、ということを表しており、結局は機材では無く乗り手が重要だという、ホンダとして容認できない結論が導かれることになる。


ホンダがMTB DH界にもたらした最大の遺産は、レースに勝つためにどうするか?という一見シンプルに見える問いかけに対してスマートに、時には鈍重に迫って解答を見いだす、強い意志だったのだ。決して技術的なものでは無い。このホンダがJシリーズのサーキットに残した遺産を今後にどのように繋げて行くのか、業界、レース界自体が問われることになる。


しかし、解せないのは唐突な販売中止の発表だ。もちろん、ホンダが正式に発売開始のアナウンスをしたことは無いが、東京、鈴鹿、大阪で販売店向け説明会を終えており、そこでは具体的なパーツ構成、価格なども発表され、販売店の審査申し込みも開始されてた。また、つい最近まで富士見パノラマではJシリーズのトップライダーが市販に向けてのテストを極秘で繰り返している風景が見られるなど、市販に向けて準備が着々と進んでいる様に見えた。


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Team G Cross Hondaの生え抜きと言える井手川直樹。このチームで飛躍的に成長した。


以前から漏れていた噂は、朝霞研究所やHRCは販売にこぎ着けたいと考えているが、本社にはその気が無い、というものだった。今回の唐突な発表には、大企業ならではの政治的な駆け引きがあったものと想像ができるが、最大の被害者はRN01Gの発売を心待ちにしていた一般ライダーと、契約ライダーだ。MTB業界を軽んじていると思われても仕方の無い所だろう。既にTeam G Cross Hondaのライダーは新しいスポンサー獲得に向けて動き出していると言われており、来シーズンの勢力図に大きな変化が生まれるのは間違い無い模様だ。この週末、RN01が出走する最後の世界戦がスコットランドのフォートウィリアムで開催される。ここで有終の美を飾ることができるのだろうか?


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