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内嶋亮、ホンダチームで掴んだ全日本勝利

2007年07月28日 14:52 written by Teisuke Morimoto

7月21日、秋田県仙北市田沢湖温泉スキー場にて第20回全日本マウンテンバイク選手権大会DH競技が開催された。


田沢湖温泉には宿泊施設を持つ秋田県立田沢湖スポーツセンターが所在し、サッカー場、ラグビー場、スキー場などがその周りを取り巻き、充実したスポーツ環境が実現されている。老朽化が進んでいたスポーツセンターも昨年に場所を移して新築され、選手からも格安で利用できる温泉付きの宿泊施設として人気が高い。


DHコースは例年使用されていたコースは使われず、完全に新設計された。デザインを担当したのは安達靖だったものの、コースが完成して走れる状態にまでなったのはレースの直前であり、安達に大きなアドバンテージがあったとは言えない。コース長は1,500m、標高808mからゴールの226mまで標高差582mを約2分で一気に駆け下りるショートコースだ。シングルトラックが2ヶ所設置され、ドロップオフなども縦の動きも多く、内嶋亮が「誰もが気持ち良く走れるコース」と評したように、選手からは好評だった。


レース前日の金曜日、タイム計測される公式練習とも言える、タイムセッションが行われた。その結果、井手川直樹、永田隼也、安達靖の順となり、内嶋亮は後輪のパンクによりスッキリとしないまま金曜日を終えることになる。タイムセッションでは上位三強の構図が崩されたことになり、また2年前の最後に行われた田沢湖大会では永田が真っ向勝負で内嶋亮を破って2位に入っており、コースが違うとは言え、永田の初優勝にも期待が集まる結果となった。


レース当日の土曜日、天気予報は煮え切らない予報を告げており、雨とも曇りとも読める、まさに予測不能な天候になった。予選では最後まで雨が降らず、この予選で1位となったのは安達靖。安達はこの結果に驚いていた。2秒794という大差を2位となった内嶋に付けていたのだ。安達は一匹狼とも言えるライダーで、練習はほぼ1人で走る。人の後ろを走るのが自分の性格に合っていないということと、他のライダーに自分の手の内見せたく無いという理由もある。多くの選手は複数台でトレインで走り、お互いの欠点を補完し合い、そして走るラインを仕上げて行く。それとは対照的だ。つまり、自分の速さがどれくらいなのか?という答えが初めて明かされるのはタイムセッションや、予選なのだ。安達は最近、自分が練習で「遅い」と感じるという。「遅い」と感じる時ほど、タイムセッションや予選で良い結果が出ることが多く、ここにも好調さが現れていた。


マスターのレースが終わり、ジュニアのレースが始まる昼過ぎ、山頂が分厚い雲に覆われ、その雲が次第に麓まで降りて来て、雨が降り始めた。その雨は次第に強くなり、数十分降り続ける。ジュニアの選手は3人が出走し、その全員が転倒したという。バンクなどはツルツル状態となり、コースコンディションは一気に難しいものとなった。ジュニアのディフェンディングチャンピオン、昨年の世界戦代表でJシリーズのエリートクラスでも一桁に入る実力を持つ門脇祥(SEO CYCLE ARIGER)も転倒、三木洋介(YOHOセオ八潮)にそのジュニア王者の地位を明け渡してしまった。


午後2時、エリート女子決勝がスタートする。台湾国籍から日本国籍へと帰化したことにより出場が可能となった中川ヒロカは予選を7位で通過して、6番目にスタート、3分14秒657ゴールして暫定1位となる。復活した大西雅美もこのタイムを上回ることができず、佐藤百江が3分6秒565が一気に更新して1位に。服部良子、池田恭子、飯塚朋子と次々にゴールするが、誰が佐藤のタイムを更新することができない。そして、最後に降りてきたライダーは末政実緒。2分47秒841のタイムでゴールして8連覇をいとも簡単に達成してしまった。ゴール直後にインタビューを受ける末政の表情は決して明るいものでは無かった。2位に18秒差という圧倒的なタイムで優勝しながらも、決勝で転倒したことを悔やんでいたのだ。全日本はあくまでも取らなければならないタイトルの一つ。今後もアジア戦、世界戦、WCとまだまだ戦いは続く。


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末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE)


午後2時30分、ほぼ雨は降り止み、エリート男子決勝がスタートする。8番目にスタートした塚本岳が2分27秒451で暫定トップとなり、そのまま長い間その座を守り続ける。予選で転倒、14番目にスタートした永田もスリッピーな第1コーナーで転倒した影響によりリアのローターを曲げてしまい、2分34秒245のタイムとなる。ここで、ゴールした永田はホンダのスタッフに、ドライタイヤを使うべき、という情報を伝える。前後ともマッドタイヤだった永田はブロックのヨレを感じたのだ。この情報は即座に無線でスタート地点のスタッフに伝えられ、井手川、内嶋とも直前にリアタイヤをドライタイヤに変更する。


井手川と永田が所属するG-Cross Honda IDEGAWAと、内嶋の所属するG-Cross Honda UCHIJIMAはあくまで独立したチームであり、ライバル関係にある。しかし、今回は違った。互いに情報を交換し合い、ホンダチームとして動いていたのだ。しかも、ホンダ関係者は普段のJシリーズには顔を見せない首脳陣も現れ、ホンダとしてのバックアップ体勢が明かに違った。


これには大きな理由がある。RN01Gの市販だ。8月に正式なプレス発表が行われる模様だが、小売店向けの説明会が国内3ヶ所ですでに終了しており、フォークを含むフレームキット、ほぼ完成車のキットの2種類のキットが予定されていること、その仕切率、おおよその上代も発表された模様だ。しかも、今年のインターバイクでホンダはブースを構えてバイクを展示するという。ホンダとしても全日本選手権のタイトルは必ず獲らなけばならないタイトル。チーム井手川とチーム内嶋のどちらでも良いから、とにかく勝たなくてならない、それくらいの意志は感じさせた。


とうとう塚本のタイムを伊藤良高が破る。そして竹本将史、大島礼治、和田良平と次々にタイムを更新し、向原健司が2分24秒721でトップに立つ。この後の柴田幸治、丸山弘起、櫻井孝太もこの向原のタイムを上回ることができず、残るは3強に。井手川直樹は2つめのシングルトラックの出口にあるドロップオフ手前でバランス崩して転倒、それでも転倒してない向原のタイムを上回る2分23秒391で暫定1位に。次にゴールした内嶋亮は2分20秒906で簡単に井手川のタイムを更新して1位に立つと、残すは安達靖のみ。電光掲示板に表示されたタイムは2分22秒093。この瞬間、内嶋の優勝が決まった。


表彰式に現れた安達のシンガードには大量の泥が付着しており、転倒したのは明かだった。コース上部で観戦していた観客の多くが、安達のスピードは圧倒的だったと証言しており、ライバルチームの関係者までが安達の優勝を思ったという。しかし、コース中盤に設置されたテーブルトップの次に待ち受けていたスリッピーなバンクの餌食となってしまったのだ。安達と内嶋のタイム差は1秒187。このような推測は無意味ではあるが、安達が転倒していなければどれくらいのタイムが出たのだろうか?


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内嶋亮(G-Cross Honda UCHIJIMA)


内嶋はこの週末、決して絶好調だった訳では無い。金曜日のタイムセッションではパンク、予選でも安達に2秒794差を付けられての2位だった。決勝直前に降った雨が、リセットさせてくれたと内嶋は説明する。ウェットコンディションでの練習もある程度の本数を確実にこなし、そこで試したラインを決勝で使う場面があったという。ウェットも想定したラインの組み立てを週末に向けて確実に行い、直前での路面の変化にも完全に対応出来たベテランの勝利、そしてホンダチームの完全勝利だった。


これで全日本選手権、Jシリーズチャンピオン、ナショナルチャンピオンのタイトルの内、1つの席が埋まったことになる。残るJシリーズ、ナショナルとも、安達、井手川にもまだまだチャンスはある。特に、今季から全日本選手権はポイントが低くなり、今までは獲得ポイントがずば抜けて高い全日本選手権さえ制覇してしまえば、Jシリーズはほどほどに上位に食い込めばナショナルランキング1位を実現することができた。この歪なポイント制度が是正されたため、ナショナルランキングの戦いは最後まで目が離せないだろう。井手川は3位という成績を悔やみ、「埼玉まで遠いな」と漏らした。内嶋は言う。


「3位は俺らにとって最下位と同じ」


もちろん、この「俺ら」とは安達、井手川、内嶋のことだ。開幕戦、この三強の構図が崩れ、3位に向原健司が入り、内嶋は4位に甘んじた。これには内嶋も焦りを感じざるを得なかったという。しかし、開幕戦以降、この三強の構図は崩れていない。彼らを脅かすライダーはシーズン後半現れるだろうか。


全日本MTB選手権田沢湖大会フォトギャラリーはこちら


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内嶋亮と末政実緒の全日本コンビ。


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DHジュニア男子決勝
1位 三木 洋介(YOHOセオ八潮) 2.52.960
2位 門脇 祥(SEO CYCLE ARIGER) 3.08.824
3位 黒沢 大介(ST' PAUL'S B.R.C) 3.12.658


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DHエリート女子予選
1位 末政 実緒(Team FUNFANCY/INTENSE) 2.30.646
2位 飯塚朋子(ATOMIC Racing) 2.42.505
3位 池田恭子(Team Cannondale) 2.48.237
4位 服部良子(服部良子) 2.48.476
5位 佐藤 百江(WORKS-1) 2.49.123


DHエリート女子決勝
1位 末政 実緒(Team FUNFANCY/INTENSE) 2.47.841
2位 佐藤 百江(WORKS-1) 3.06.565
3位 中川 ヒロカ(Commencal JP) 3.14.657
4位 大西 雅美(Team YRS) 3.16.326
5位 尾芦 資子(風魔吉祥寺) 3.17.018


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DHエリート男子予選
1位 安達 靖(Team Ikuzawa) 2.11.751
2位 内嶋 亮(G-Cross Honda UCHIJIMA) 2.14.545
3位 井手川 直樹(G-Cross Honda IDEGAWA) 2.12.123
4位 櫻井 孝太(櫻井孝太) 2.16.766
5位 丸山 弘起(Team TECH-IN/参組) 2.16.933
6位 柴田幸治(A&F SANTACRUZ) 2.17.661
7位 向原 健司(Team KHS 重力技研) 2.17.843
8位 和田 良平(RINGOROAD.COM) 2.19.437
9位 小山 航(国際アウトドア専門学校) 2.19.728
10位 大島 礼治(basssound products) 2.20.888


DHエリート男子決勝
1位 内嶋 亮(G-Cross Honda UCHIJIMA) 2.20.906
2位 安達 靖(Team Ikuzawa) 2.22.093
3位 井手川 直樹(G-Cross Honda IDEGAWA) 2.23.391
4位 向原 健司(Team KHS 重力技研) 2.24.721
5位 和田 良平(RINGOROAD.COM) 2.25.825
6位 竹本 将史(AKI FACTORY) 2.26.496
7位 伊藤 良高(NCFR) 2.26.766
8位 大島 礼治(basssound products) 2.27.235
9位 塚本 岳(MX/MONGOOSE) 2.27.451
10位 丸山 弘起(Team TECH-IN/参組) 2.27.659


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